おじょうさん。

姉のまりこと2人でファミレスにいるとき、まりこが突然聞いてきた。

「お嬢様になるにはどうしたらいい?」

「は?」

「おじょうさまになるには、どうしたらいいの?」

「おじょうさんになりたいのか?」

「私はおじょうさんになれないかねえ。お嬢さんには程遠いかねえ。」

「???」

よくよく話を聞くと、まりこは前の日に一緒に飲んだ男に、

「まりこさんはお嬢様風じゃないからタイプじゃない」 と言われたらしい。

「私とお嬢様はどこが違うの?」

言われてみると、意外に難しい。そして、考えていった。

「お嬢様は、遅刻しそうになって必死に走ったりしないよ」

「そうかあ、後は?」

うーん。あっ。

「お嬢様は新聞代を払うときに、寝ぐせとよれよれパジャマで出たりしない」

「じゃあ、突然来たらどうすればいいの?」

「居留守を使うんじゃない?」

「そうかあなるほどめんどくさい。」

「お嬢様はめんどくさいんだよ。」

「そうかなあ、でもさあ、もっと根本的な違いはないの?」

うーん。

悩んでいると、まりこが言った。

「あんたはおじょうさんについて何にも知らないな。」

くっそお。おれがおじょうさまについて、こんなに無知だったなんて。

「お嬢様は、まりこみたいに、よれよれの服を着たりしないんじゃない?ブランド物を着たり、無駄遣いをしないと。」

「そうかなあ、賢いおじょうさまだっているよ。私が目指しているのは賢くて性格の良いほんわかしたおじょうさま。」

うーん。

それからさらに、2人で悩んで、まりこが顔を掻きながら、

「かゆいお嬢様って見たことないよね。」

「うん、見たことない」

おしとやかに振る舞わなければいけないのかね。などと言いつつ、その時は話が一段落したのに、その日1日中まりこはおじょうさまおじょうさまと言っていた。