2月に、ぼくが大好きな、
千葉県にある酒蔵「寺田本家」に見学に行ってきたので、
レポートを書こうと思います。
寺田本家のことは、過去のブログでも書きましたが、
江戸時代の酒づくりを復活させたという、究極の、酒蔵です。
体にも、自然にもやさしく、
余分な添加物が混ざってないからか、
飲みすぎても、ほとんど翌日に残ることなく、
体に、しみわたるような、すばらしいお酒なのです。
寺田本家は、1673年頃の創業で、歴史のある酒蔵ですが、
ずっと自然な酒づくりをしてきた訳ではなく、
一時期は、経営効率を重視して「安く、速く」つくるため、
普通の酒蔵のように、機械化したり、添加物を入れるような時期もあったそうです。
戦後の世間の「日本酒ばなれ」で、
寺田本家が経営不振でつぶれかけた時、
先代の当主「寺田啓佐」さんは決断しました。
「どうせ、つぶれるのなら、
本物の酒を、つくってみたい。
自然の摂理にかなった、
命の宿った“百薬の長”たる、
本来の日本酒をつくりたい。」
広告も、営業努力も、効率化もやめて、
ただ、本物を目指した酒づくりをはじめると、
できたお酒は、多くの人を虜(とりこ)にし、
応援する人、口コミを広げる人が、次々にあらわれ、
今では、なんの広告をしていないにも関わらず、
秋に出来上がったお酒が、1年もたず、
春ごろには完売してしまいます。
寺田本家のお酒は、
すべて、「無農薬のお米」で作られています。
自分たちで作ったり、近隣の農家さんに作ってもらったり。
お米を無農薬にすると、
原価は、3倍くらいになってしまうそうです。
それでも安い価格にできるのは、
広告費を使わないで、
その分を、お米代にまわせるから。
しかも、最近は、
寺田本家から直接買う「直販」のお客さまが多いそうで、
酒屋さんや卸業者を介さないからこその
高品質低価格なのだと思います。
寺田本家の仕込み水は、この井戸水を使っているそうです。
この井戸の水が枯れないのは、
裏の神社の森のおかげだそうで、
酒づくりは、森を守ることから始まるとおっしゃっていました。
酒づくりには、水がとても大事なようで、
組み上げた井戸水を、浄水器に通して、
電子をチャージし、分子集団を細かくすることで、
微生物たちが、いきいきと育つ、生命場ができるそうです。
寺田本家では、
昔使っていた機械も、少しずつなくなり、
今では、ほとんど機械を使いません。
お米を洗うときは、真冬でも、冷たい水で手洗い、
蒸したお米を移すときは、人が桶に入り、スコップで掘り出す。
それはそれは、重労働なのですが、
「本物の酒をつくりたい」という情熱ある若者が全国から集まり、
大変な作業をしてくださっているそうです。
手で触れるからこそ、そのときどきの「あんばい」に気づいて調整できる。
と、蔵人の一人の方がおっしゃっておりました。
お米をすりつぶす「もと摺り」という作業では、
2~3人の蔵人が、唄を歌いながら、混ぜ続けます。
実演してくれました。
唄を最後まで歌うと、25分だそうで、
この「もと摺り」の過程では、
それを朝・昼・晩の3回、行うそうです。
唄を歌うことで、
「思い」や「波動」が伝わるとおっしゃっておりました。
寺田本家では、少しずつ、
ステンレスの桶から、木の桶に変えているそうです。
この木桶、なんと、200万円弱、するそうです。
木樽づくりも、まさに職人技で、
できるだけ節がなく、年輪の細かく詰まった杉を使い、
水が漏れないようにするそうです。
桶の周りに巻く「箍(たが)」用の竹を選ぶ、おばあちゃん職人がいるそうで、
おばあちゃんが、竹やぶに行って、
「これとこれを切りな」
と言って、竹を選ぶそうです。
そんな木桶を作れる職人さんたちは、
ほぼ絶滅しかけているそうで、
「ぼくたちが木桶を使うことが、職人さんの存続につながると思う」
とおっしゃっていました。
お酒は、蒸したお米に、麹菌をふりかけて作りますが、
寺田本家では、麹菌も、自分たちで培養しています。
稲に、麹菌をつけて、育てるそうで、
そこまで微生物と向き合っている酒蔵は、とても珍しいようです。
この部屋で、蒸したお米に、麹菌をふりかけるそうです。
このような部屋は、雑菌が入ると大変なので、
見学者は入れないのが普通だそうです。
ウィキペディアにも、
「麹室の入室には全身の消毒が必要で、関係者以外は入れない」
と書いていました。
寺田本家では、ぼくたち見学者を、
消毒もなく、あっさりと、入れてくれた上に、
「雑菌大歓迎」と言っていた。
無菌状態を作るから、逆に雑菌が繁殖する。
場が整っていれば、悪い菌が入っても、悪さをしない。
この部屋は、四方の壁や地面に炭を埋蔵して磁場を整え、
いろんな菌が混在した、多様性のある場を作っている。
消毒滅菌して、都合の悪いものを排除したような場は、もろさがあるし、
複雑な味わいや、体への滋養強壮効果は、多様な場からしか生まれないと思う。
ぼくたちの体内にも、何億という菌が住み、菌と共に生きている。
なんでもかんでも、滅菌して排除するのではなく、
場を整え、
いろいろなものを排除せずに受け入れて、
多様性のある社会で、共に生きていきたいというのが、
ぼくたちの考えです。
と、おっしゃっていました。
寺田本家の酒づくりでは、よぶんな手を加えません。
醸造アルコールの添加も、一切しないし、
乳酸菌や、酵母菌を入れることもしない。
時間をかけて、ていねいに、
蔵に住み着いた(空気中の)菌が、自然におりてきて、
発酵を進めるのに任せます。
そのような作り方を、「生酛(きもと)造り」というそうで、
ヨーグルトのようなまろみのある、
酸味と旨味の味わい深いお酒ができるようです。
自然の営みは、みごとだそうで、
菌たちは、自分たちの順番が来たら、おりてきて、
自分の役割が終わると、次の菌にバトンタッチしていなくなる。
菌の営みには、自我がなく、
個が全体を織りなしていく、宇宙そのものだと思う。
と語っておられました。
今回の酒蔵見学は、
酒蔵をまわる前に、宴会がはじまり、
酒蔵をまわる頃には、当主の優さんは、
けっこう酔っていたのですが、(実は、お酒、弱いらしいです)
そんな中で、こんなに熱く、かっこいいことを語れる優さんは、すごい!
すてきな想いにあふれています。
毎年9月に、寺田本家の蔵出し時期に合わせて、
ぼくは毎年、かってに「寺田本家蔵出しパーティー」をしていますが、
優さんが、「ぜひ呼んでください」と言っていたので、
もしかしたら、今年は来てくれるかも?
お楽しみに。
今年の分のお酒も、すでに、売り切れ間近だそうです。
これを逃すと、9月まで飲めないので、
興味ある方は、すぐさま、お申し込みくださいませ。
寺田本家のお酒のラインナップについては、
以前のブログで書いたので、こちらをご参考に。
http://nunyoga.seesaa.net/article/250554266.html
お酒が飲めない方には、
「酒粕(さけかす)」と、「米麹」がおすすめです。
ぼくのまわりで、料理をする人たちの間でも、
大評判の、寺田本家の酒粕と米麹。
当主の奥さんである「寺田聡美」さんは、お酒が飲めないそうですが、
お酒が飲めない人でも、発酵の恩恵を感じてほしいということで、
麹や酒粕を使った料理の研究をされていて、
最近、本も出版されたようです。
~寺田本家~
麹・甘酒・酒粕の発酵ごはん
2014年、3月16日(日)には、
町を挙げてのお祭り「お蔵フェスタ」が開催されるそうです。
寺田本家の蔵見学や、試飲ができるチャンスなので、
お近くの方は、ぜひ!
今回の蔵見学で、
寺田本家の方々の温かさや、すてきな想いに触れ、
ますます、ファンになりました。
このようなすてきなお酒や、すてきな想いが広がっていったらうれしいです。
寺田本家ホームページ
http://www.teradahonke.co.jp/