ヴィパッサナー瞑想合宿では、
毎日、練習内容が変わっていきました。
1日目は、
「呼吸をしている鼻先の感覚に意識を集中しなさい」
2日目は、
「呼吸をしている鼻と、上唇を結ぶ三角形の部分の感覚に意識を集中しなさい」
というように、
毎日、指令を与えられます。
夜の講義では、
その日に練習していたことを理論的に説明してくれて、
疑問がわきそうなことについて、
ちゃんと説明してくれる。
さらには、
その頃に考えていそうな、
なまけ心、疑い心などをズバリ指摘されたりして、
やる気を出させてくれる。
前向きで、よい心を持つための、たとえ話をいっぱいしてくれる。
とてもよくできた教育プログラムなのです。
瞑想をマスターするためのステップを、効率よく教えてくれる、
悟りにいたるための予備校みたいです。
4日目には、
敏感になった鼻先の感覚を、全身に広げていく練習に入りました。
それまで、何に向かってるのか、全くわかってなかったのですが、
「もしや、これは、全身ぞわぞわに向かってるのでは」
と気づきました。
全身ぞわぞわとは。。
全身がゾゾゾっという、鳥肌のような感覚になることです。
(ぼくが勝手に命名してるだけですが)
ぼくがこの全身ぞわぞわを発見したのは、大学生の時でした。
徹夜で麻雀をした翌朝に深呼吸をすると、
背骨に沿ってゾクゾクっという気持ちいい感覚がおこって、
癒されることを発見したのです。
なぜか、徹夜明けの時しか出ない。
しかも、2、3回やると、ならなくなる。
「なんと、ブッダの瞑想法とは、全身ぞわぞわだったとは」
「ぼくなんて、大学生のときからやってたもんね」
みみっちい優越感の雑念が沸き起こりました。
しかし、
「ブッダは、全身ぞわぞわで悟りに至ったというのに、
ぼくは、麻雀の疲れを癒すだけだった」
という、へんてこな反省心も浮かびました。
ヨガをはじめるようになってから、
この全身ぞわぞわの感覚は、
くつろぎのポーズでの脱力(ヨガニードラ)のときや、
塚本先生の瞑想の中で、背骨に電気を通すイメージをする時に、
感じられるようになりましたが、
今回ほど、確実に、深く感じられることはありませんでした。
この状態は、
全身に恍惚感があり、気持ちよく癒されるのだけど、
もっと深い意味があるそうです。
ゴエンカ師によると、
人間の感覚は、潜在意識と密接につながっているため、
体の感覚の意識を研ぎ澄ますことで、
潜在意識にアクセスできるそうです。
そして、潜在意識を完全に浄化すると、悟りに至るそうです。
ゴエンカ師は、
「潜在意識は、何かを望んだり、嫌がったりしたときに作られる。
もし、体の感覚の意識を保ったまま心の平静を保ち、
新たになんの潜在意識も作らないのであれば、
過去につくった潜在意識が浮き出てきて、消えていくだろう。」
とおっしゃっていた。
すべての感覚も、思考も、出来事も、
すべての物事は、生じては、消えていく。
そのひとつひとつを、
動じることなく、判断することなく、
客観的に眺められれば、
苦しみのない世界に到達できるというのです。
世間でよく行われている、
脳力開発や、イメージトレーニングの世界では、
何か叶えたいことを潜在意識に刷り込んで、
実現させていきますが、
このヴィパッサナーでは、とにかく平静の心を保って、
潜在意識を消していくそうです。
執着のない意図、
エゴのない意図は、
いいと思うんだけどなあ。
そのあたりをどう考えるかは、むずかしいところだなと思いました。